| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-22 (Oral presentation)

極東ロシアの山岳地に生育するハイマツの成長と形態:高山帯と森林帯の比較

*和田直也 (富大・極東), Bryanin S.V., Kozyr I. (IGNM, RAS), Lisovsky V.V. (ZNR)

ハイマツ(Pinus pumila (Pall.) Regel)は、北東アジアの寒冷地を代表する植物の一種であり、日本の中部山岳地域を世界的な南限とし、シベリア北東部のベルホヤンスク山脈を北限とするまで、広い範囲に分布している。高緯度地域のツンドラ帯や高標高域の高山帯が、地球温暖化が生態系に及ぼす影響を評価する場として注目される中、優占種であるハイマツの成長変遷を明らかにする研究やモニタリングが日本の高山帯において行われるようになった。しなしながら、日本以外の地域に目を向けると、分布の中心である大陸での知見が不足している。ハイマツは亜寒帯の海洋性気候下では、低地に単純優占群落を形成する一方、大陸性気候下の山岳地においては、森林限界を越えた高山植生を特徴づけている他、その森林帯においては下層構成種としても分布している。森林帯と高山帯という異なる生育環境の違いに応じて、その成長変遷を明らかにするためには、まずは形態や成長の変異を明らかにすることが重要であると考えた。本研究は、極東ロシア・アムール州北部のトゥクリングラ山脈に生育するハイマツを対象に、針葉とシュートの形態を比較することで、両環境における成長・繁殖様式を明らかにすることを目的として実施した。二つの山の森林限界を越えた山頂とカラマツやエゾマツが優占する森林帯において、主幹の先端を採取し、近年のシュート成長を比較するのと同時に、針葉や枝の形態、針葉の推定寿命等を比較した。その結果、高山帯に生育する個体は森林帯の個体に比べ、葉や枝が太くて短く、材密度が低く、球果生産量が多く、針葉の寿命が短い等の特徴が明らかとなった。以上の結果より、両環境における本種の環境適応について考察を行う。


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