| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-26 (Oral presentation)

側所的種分化の速度~交配確率が遺伝的距離により減少する場合~

*Yamaguchi, R. (Kyushu Univ.), Gavrilets, S. (Univ. Tennessee), Iwasa, Y.(Kyushu Univ.)

一般的な種分化様式では、まず1種からなる集団の地理的分断が起こったのち、形成された2集団が独自の突然変異を蓄積することで生殖隔離が成立する。さらに集団間に移入と交配が起こる場合は遺伝子流動によって分化が抑制されるため、この遺伝子流動を乗り越えて生殖隔離に至らなければならない。実際の集団分化では完全に中立な遺伝子の蓄積が生殖隔離に影響するよりも、不和合成が連続的に蓄積する場合が多く、交雑個体の適応度が徐々に下がることで遺伝子流動自体も抑制されていく。本講演では、変異の蓄積とともに個体間の交配成功確率が低下することを仮定した数理モデルによる種分化ダイナミクスの解析を紹介する。変異に伴う不和合成の増加には、相加的なものからエピスタシスを含むものまで4種類の蓄積様式を取り上げる。遺伝的距離はその初期において増加し、突然変異と遺伝子流動のバランスで決定される安定平衡点に到達するが、確率的に到達することでさらなる遺伝的距離の増加を引き起こす不安定平衡点も存在した。これは集団間の移入があってもなお交配確率の低下によって集団の分化が促進されることを示しており、不和合性の蓄積様式を決める関数および確率的浮動が種分化のダイナミクスを大きく変えることを示唆する。また分化のシナリオとして、ある時点で移入率が上昇するような地理的構造の変化があった場合に分化が継続されるか、あるいはより一種に近い状態へと戻るかの予測を議論したい。


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