| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-28 (Oral presentation)

瀬戸内海島嶼による隔離がアカネズミ集団の遺伝的多様性に与えた影響

*佐藤淳,田坂由里奈,山本祐哉,白石裕樹,前田康平,田坂僚也(福山大・生物工),高田靖司(愛知学院大・歯),植松康(愛知学院大・歯),酒井英一(愛知学院大・短期大学部),立石隆(藤沢市在住),山口泰典(福山大・生物工)

本研究では、瀬戸内海島嶼において、アカネズミApodemus speciosusを対象に、島の隔離が集団の遺伝的分化と多様性に与える影響を評価した。向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島、大崎上島、上蒲刈島、下蒲刈島の島嶼に加えて、本州と四国から得られた計170個体を対象に、ミトコンドリアゲノムからDloop領域約300bpの塩基配列を決定し、島嶼集団の遺伝的多様性を明らかにした。その結果、1)島嶼集団の遺伝的多様性は本州や四国の集団と比較して低いこと、2)島嶼集団のハプロタイプはそれぞれの島に固有であること、そして3)それぞれの島嶼集団は主に本州由来のハプロタイプを持つことが明らかとなった。このことは、過去に本州集団が大島周辺まで分布域を広げており、瀬戸内海島嶼の隔離に伴い、それぞれの島で異なるハプロタイプが集団内に固定されたことを示唆する。同時に、島の隔離により集団サイズが減少し、それぞれの島の集団の遺伝的多様性が低下すると共に、最終的に島嶼間で遺伝的分化が生じたと予想される。対照的に、味覚受容体遺伝子はそれぞれの島固有の多様性を示した。旨味受容体遺伝子Tas1r1約400bpを用いて島嶼集団の遺伝的多様性を評価したところ、本州集団よりも多型的な集団(向島)や、本州と同等の多型性を維持する集団(因島、伯方島、大島)、Dloopと同様に遺伝的多様性が低い集団(生口島、大三島)といった島固有の多様性が明らかとなった。DNAバーコーディング法で糞から同定した動植物の予備的なデータと共に島固有の餌環境に対する自然選択の有無について考察したい。


日本生態学会