| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-33 (Oral presentation)

殺虫剤抵抗性管理における害虫生活史形質の重要性

*須藤正彬, 高橋大輔, 山中武彦 (農環研)

複数の薬剤を効果的に組み合わせて害虫の殺虫剤抵抗性発達を遅らせるために、交互に使うローテーションや同時に施用する混用などの方法が考えられてきた。一方で虫の生活史特性、すなわち保護区(作物以外の寄主植物)の有無や、生涯に経験する圃場間移動、交尾および薬剤暴露の順序は、個体群内の抵抗性遺伝子の固定に異なる影響を及ぼしうる。本研究ではこれらの生活史イベントをモジュール化することで、入れ替え可能かつシンプルな個体群動態モデルを構築し、害虫タイプを考慮した、失敗しない抵抗性管理戦略を検討した。

施用区の全幼虫が薬剤を摂取する浸透移行性の薬剤(育苗箱施用剤など)を仮定すると、「交尾後移動」ではローテーションが、「移動後交尾」では混用が高い遅延効果を示した。幼虫であっても一部の個体が薬剤を逃れうる施用形態(散布)では、生活史順序に関わらず混用が抵抗性発達を最も遅らせた。いずれの遅延効果も高い薬剤濃度を前提として、抵抗性遺伝子をヘテロで持つ虫を殺し、残った少数の抵抗性ホモ個体を圃場外からの流入感受性個体と交配させ、遺伝子頻度を薄める原理である。とりわけローテーションの成功には高薬量が必須条件であったが、作用機構の異なる2剤の混用においては比較的低薬量でも、ローテーションの高薬量時に匹敵する遅延効果を得られた。

一方で保護区を持たないモデルでは、薬剤施用形態・生活史順序に関わらず有効な遅延戦略が無かったことから、施設栽培では明示的に保護区を設置するか、害虫の持込を阻止する必要が示された。また一部のアザミウマ等にみられる、圃場外からの感受性個体と交配せず単為生殖のみを行う虫タイプにおいても、抵抗性発達を遅延しうる複数剤組み合わせ手段は見つからなかった。


日本生態学会