| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-13 (Oral presentation)

チョウは本当に持久戦をしているか?

*竹内 剛(大阪府大),藪田慎司(帝京科学大),椿宜高(京大)

持久戦とは、対戦者がディスプレイのみを行い、先に切り上げた方が負けとなる闘争モデルである。チョウやトンボなどの飛翔性昆虫の雄が配偶縄張りを巡って繰り広げる、お互いの周りを回転したり追いかけ合う行動は、典型的な持久戦だと考えられている。

しかし、持久戦モデルには難点がある。闘争する2個体のディスプレイの激しさを合わせる何らかの圧力がない限り、ディスプレイを手抜きしてエネルギーを節約する個体が有利になってしまうため、闘争が成立しなくなってしまう。また、飛翔性昆虫の縄張り争いに持久戦概念を適用するためには、飛翔中の同種の雌雄を区別できるという前提が必要であるが、昆虫の複眼は空間解像度が低く、決して自明なことではない。

これらの前提が満たされているかを調べたところ、トンボでは比較的よく満たされているが、チョウではほとんど満たされていなかった。したがってチョウの縄張り争いは持久戦以外の概念で理解すべきであり、演者らは雄同士の誤求愛という仮説を提唱する。この説は、2個体のディスプレイの激しさを合わせる圧力がなくても機能するし、チョウの識別能力を調べた過去の実証研究の結果とも合う。


日本生態学会