| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-15 (Oral presentation)

Challenge Hypothesisの背景にある進化遺伝機構

*小北智之(福井県立大), 石川麻乃, 北野潤(遺伝研), 森誠一(岐阜経済大)

Batemanの原理に基づくと,雄の繁殖成功は配偶者獲得数に強く依存することから,一般に,雄間競争と雌からの配偶者選択に有利な形質が雄に適応進化すると予測される.脊椎動物全般において,このような形質発現はしばしば雄性ホルモン依存的であることが知られている.Wingfieldら(1990)によって最初に提唱された「Challenge hypothesis」は雄の繁殖成功と関連した雄性ホルモンの生合成・分泌パターンの進化を説明する.それでは,このような雄性ホルモンの生合成・分泌パターンの適応進化はどのような遺伝基盤によって達成されているのだろうか.その進化遺伝基盤が解明できれば,雄の繁殖戦略の適応進化機構の詳細に関して,厳密にそして深く理解することが可能となるだろう.

我々は,このような課題にアプローチする一つの視点として,行動生態学と進化ゲノム学のモデル魚類の一つであり,ゲノム情報が充実している淡水型イトヨ類を対象として,異なる繁殖システムを示す自然集団間に存在する雄性ホルモンの生合成・分泌パターンの遺伝的変異に着目した.まず,比較トランスクリプトーム解析やpQTL・eQTL解析などの生態ゲノミクスのアプローチを駆使して,「Challenge hypothesis」が説明する雄性ホルモンの生合成・分泌パターンの背後にある遺伝基盤と原因遺伝子座を特定した.次に,様々な分子生物学的解析や集団遺伝学的解析を用いて,そのような生合成・分泌パターンに多様性をもたらす原因候補DNA変異を特定した.本講演では,“行動生態ゲノミクス”と言うべきこれらの一連の研究成果を紹介する.


日本生態学会