| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-21 (Oral presentation)

侵入害虫マメコガネ(Popillia japonica)の飢餓状態および蔵卵数と飛翔特性の関係

*佐伯順子(九大・農), 菅原有真(九大・農), Paul V. Switzer (Eastern Illinois Univ.), 津田みどり(九大・農)

マメコガネ(Popillia japonica)は、100年以上前に北米・ニュージャージー州へ偶発的に侵入、定着に成功した。以来、ブドウ、大豆などの農作物を含む様々な植物を捕食するため、害虫として注目されている。米国での西への分布拡大は現在でも続き、近年コロラド州への到達が報告された。本研究では、この分布拡大に貢献している可能性がある飛翔特性について調査した。野外で採集した個体に、水のみ、またはブドウの葉をインキュベータ内で3日間与えた。実験当日、個体をフライトミルに取り付け、飛翔行動を観察した。飛翔直前の個体体重、体幅、雌雄、捕食有無、蔵卵数、時間帯(朝・昼・夕・夜)の、飛翔の頻度、時間、距離、速度への影響を検証した。飛翔時間・飛翔距離共、捕食有の個体および朝の時間帯に長く、体重と正、体幅と負の関係があった。雌の方が長い飛翔時間を示したが、飛翔距離の場合、体重との正の関係を加味すると、体重が比較的軽い雄の方が長い飛翔距離を示した。飛翔速度と体重の間に正の関係がある中、体重が軽い捕食無の個体の飛翔速度が高かった。蔵卵数は飛翔時間と正の関係があり、産卵前の行動と関連している可能性を示唆している。体重が重い個体による長い飛翔時間・距離は、余剰エネルギーの飛翔行動への配分と考えられる。一方、捕食無の個体の比較的高い飛翔速度、および全般的に軽体重の雄の比較的長い飛翔距離は、これら個体がエネルギー配分を飛翔行動に対して増大し、分布拡大に貢献している可能性がある。また、飛翔しない個体は朝に多かったものの、飛翔距離・時間は朝の時間帯に長かった結果は、この種の時間帯による行動パターンと分布拡大に関係していると考えられる。


日本生態学会