| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K2-31 (Oral presentation)

餌資源量の短期的な変化に対する雑食性食肉目ツシマテンの食性の反応

*大河原陽子(琉球大院・理工),中西希(琉球大・理),伊澤雅子(琉球大・理)

長崎県対馬に生息するツシマテン(Martes melampus tsuensis)は、動物質や果実を含む幅広い餌メニューを持つ雑食性食肉目である。多様な餌のうち、果実や節足動物がテンの糞から高い頻度で出現することが明らかになっている。テンにとって、これらの餌資源量には明瞭な季節変化がある。糞内容物分析の結果、テンの糞から出現する餌種の頻度や量は資源量に応じて変化することが分かっている。例えば果実では、2週間程度という短い結実期間のうちに、そのときの結実状態に同調して糞から出現する頻度や量が変化するが(大河原2013)、節足動物については不明である。この点を明らかにすることによって、雑食性のテンにとって、植物質と動物質の餌としての質の違いを考察することが可能になる。そこで本研究では、果実や節足動物の資源量の短期的な増減が、各餌が糞から出現する頻度にどのように影響するのか、またその影響の程度は植物質と動物質の餌で異なるのかを明らかにすることを目的とした。2013年9月から1年間、月に1~2回、糞の採集と内容物分析を行い、出現頻度を算出した。また、環境中の餌の相対密度を明らかにするため、ルートトランセクト調査(果実・節足動物)とピットフォールトラップ調査(節足動物)を行った。資源量調査の結果、夏季は節足動物の資源量が年間で最も多く、変動が少ないこと、また果実の資源量が短期的に増加することが明らかになった。糞分析の結果、果実では、出現頻度は資源量と同様に増加したのに対し、節足動物では資源量の変化が少なかったにもかかわらず、出現頻度は減少した。したがってこの時期のテンの糞における果実と節足動物の出現頻度には、節足動物よりも果実の資源量が大きく影響したことが示唆された。


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