| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-001 (Poster presentation)

上関の島の植物相と森林-30年間の移入と絶滅・オオミズナギドリ営巣の影響

*山田直季(滋賀県立大・院・環境), 高島美登里,森田修,岡野友紀(上関の自然を守る会), 渡辺伸一(福山大・生命工), 野間直彦(滋賀県立大・環境)

これまで島の生物地理の研究対象となったのは外洋にある島であり,内海の島での研究例は少ない.そこで,瀬戸内海・上関の無人島(鼻繰島,天田島,宇和島)で植物相調査と森林構造調査を行った.また,宇和島ではオオミズナギドリの繁殖が最近発見され,その営巣による植生への影響も見た.

鼻繰島で97種,天田島で110種,宇和島で87種の植物を採集した.各島の植物種数を30年前と比較したところ,大きな変化はなかったが,30%前後の種が入れ替わっていた.この値は他地域と同等かそれ以上に高いと考えられる.各島の植物種は鳥散布型が最多で,種数の30%強を占めた.外洋の島でも同様の傾向であるが,それらの場合より占める割合は低かった.以上のことから,瀬戸内海の島でも島嶼生物地理の移住と絶滅の平衡関係が成立すると考えられる.ただし,絶滅した種は陽地性のものが多く,二次林の遷移が原因と考えられた.この場合も成り立つと言えるか議論の余地がある.

各島の森林で毎木測定を行った結果,優占上位3種はスダジイ,モチノキ,ハゼノキであり,常緑樹の相対優占度は75%以上であった.上関の島の森林はシイ型林とタブノキ型種(服部,1993)を主とする照葉樹林であることがわかった.

宇和島の営巣地で植生調査を行った.営巣区・非営巣区の間で,種組成や森林構造に大きな違いは見られなかった.しかし,3月の営巣区の下層植生は非営巣区と比べ種数,被度ともに低かった.また,営巣区では上層木種の実生がわずかで,つる性植物が少なかった.オオミズナギドリの営巣によって,先行研究に見るような上層木への影響は見られなかったが,下層植生が貧弱化していることが明らかになった.


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