| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-022 (Poster presentation)

回帰木分析を用いた日本産シダ植物種の分布に影響する気候要因の推定

*松浦亮介(信大院・総工),佐藤利幸(信大・理)

日本における水平的な植物分布に影響する気候は様々なものが示唆されているが、それを量的に明らかにした研究は少ない。日本の植物分布について、シダ植物の分布は倉田・中池の「日本のシダ植物」により、国土地理院の地理分割基準である2次メッシュスケール(一辺約10km)にて詳細に記載されている。本研究ではこのシダ分布データと気候分布データを用いて、どのような気候要因がシダ植物分布に影響するかを探っていく。

シダ分布に関わる気候要因を探るため、本研究では多変量回帰木分析を用いての解析を行った。まず、シダ植物分布データとして、倉田・中池の情報に佐藤の北海道シダ分布情報を加えた650種の分布データを用いた。また気候データとして国土数値情報が提供する平年値データを用い、降水量、気温、積雪深、日射量に関する9種類の情報を抽出した。元のデータは約1km四方の3次メッシュデータであったため、解析の際は10kmスケールに平均化して用いた。以上のデータを基にR(ver.3.1.2)を用いて多変量回帰木分析を行った。地域を大まかに区分するため、回帰木の各枝に含まれる地点が全体の5%以上となる220地点となる段階まで剪定を行った。

解析の結果、回帰木は5回分岐し、6つの地域に区分された。まず、第一分岐よりシダ植生には積雪の有無が大きく影響していた。また、第一分岐の両枝から派生した第二・第三分岐では共に最寒月平均気温の影響が示唆された。更に、第二・第三分岐それぞれにおける片方の枝から派生した第四、第五分岐で年降水量の影響が見られた。これらの気候により区分された6地域を種構成のみで区分したクラスター解析の結果と比較すると、ある程度の類似性が確認できた。以上より、日本の各地域におけるシダ植生には積雪、気温、降水が段階的に影響することが示唆された。


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