| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-044 (Poster presentation)

硫気荒原に生育するツクシテンツキの生態的特性:発芽と初期成長

*山本晃弘(広島大・院・生物圏), 船津勇一(大分鶴崎高), 和崎淳(広島大・院・生物圏), 中坪孝之(広島大・院・生物圏)

ツクシテンツキFimbristylis dichotoma (L.) Vahl subsp. podocarpa (Nees et Meyen) T. Koyamaは,九州地方の硫気荒原に生育するカヤツリグサ科植物である。本種は環境省レッドリストにおいて絶滅危惧II類に選定されているが,その生態についての報告はほとんどない。そこで本研究では,本種の野外分布と土壌要因との関係について調査し,実験条件下で種子発芽に対するpHの影響について検討した。

調査は大分県別府市の明礬温泉の硫気荒原において行った。噴気孔を中心に引いたラインに沿って被度を記録するとともに,土壌をサンプリングし,化学分析を行った。

本種は噴気孔の比較的近くに純群落を形成しており,群落内の土壌pHは2-3の値を示した。一方,噴気孔から離れた地点ではススキと混生していた。

発芽に対するpHの影響を把握するために,25℃のインキュベータ内でpH2.0,3.0,4.0,6.0の条件で種子を発芽させた。その結果,低い発芽率であったが,全てのpH条件において同程度の発芽が認められた。本種と比較するため,広島大学構内で採取したテンツキFimbristylis dichotoma (L.) Vahl var. tentsuki T.Koyamaについても同様の実験を行ったところ, pH2.0においては発芽しなかった。このことから,本種とテンツキは酸性に対する耐性について異なっている可能性が示唆された。


日本生態学会