| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-051 (Poster presentation)

盗蜜者がサワギキョウの蜜生産に及ぼす影響:盗蜜排除との比較から

*松原 豊(東北大・生命), 酒井聡樹(東北大・生命)

近年、盗蜜の及ぼす影響が単純な負の影響にとどまらず、蜜報酬の変化に伴う訪花者行動の変化から正の影響に転じるため、花形質の自然選択要素となる例が報告されるなど群集生態学的に注目され始めた。

花序を形成する植物では花序内の雌雄異熟のような性配分戦略を持つ種も多い。このような種では花序内で花粉を送粉する雄期と受粉する雌期を分けることで、他家受粉率を増加させる戦略が可能となる。しかし盗蜜に対する植物の対策はほとんど知られていない。

一方、盗蜜者には適法訪花と盗蜜の両方を行う種が知られ、花序による性配分戦略に適法訪花者とは異なる影響を与える可能性が示唆される。

今回、サワギキョウを用いて、盗蜜行動による植物花序内での蜜生産への影響を調査した。サワギキョウは左右相称花・雌雄異熟の個花で花序を形成する。主な適法訪花者はトラマルハナバチ、盗蜜行動はオオマルハナバチで、構造的に花被に隙間があることで盗蜜は非破壊的に行われる。そこで、人為的に盗蜜を制限し、自然状態や盗蜜を模した除蜜処理を加えた個体と花序内での蜜収支や結実、訪花者行動について比較した。

その結果盗蜜は、蜜回復量の増加・糖度の減少を引き起こす傾向が見られた。さらに盗蜜を受けた個体は、後に花序内で開花する花の蜜生産量が増加していた。また、盗蜜行動は除蜜処理で低下したが、適法訪花頻度も減少してしまい、盗蜜の制限によっても低下した。

従って、サワギキョウでの盗蜜は蜜量によって頻度が変化するが、盗蜜を構造的に制限すると適法訪花が減少するリスクを伴う可能性が示唆された。一方で、盗蜜は花序全体の蜜報酬量を増加させるシグナルとなることで、個体単位では適法訪花者の誘引増加につながるかもしれない。


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