| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-076 (Poster presentation)

ユーカリにおけるHomeobox遺伝子過剰発現が光合成能力や葉の形態に与える影響

*佐々木恵相(京都工繊大・応用生物), 半場祐子(京都工繊大・応用生物), 河津哲(王子製紙・森林研)

転写因子は生物の細胞運命決定や細胞分化など発達過程や細胞機構を制御しているほかにも、植物の環境応答やホルモン作用の仲介にも関わっている。今回我々は数多くある転写因子の中で、有用遺伝子としてユーカリのホメオボックス遺伝子HD-Zip classⅡに属するEcHB1に注目した。先行研究ではEcHB1過剰発現体は野生型よりも成長や木繊維長が大きくなるということが分かっている。しかし、成長に決定的な影響を与える葉の光合成や形態についてはまだ調査されていない。本研究ではEcHB1遺伝子を過剰発現させたユーカリの表現型、光合成速度、水利用効率などを評価すると同時に、葉の構造を解剖学的に観察することで、EcHB1による葉の内部構造の変化がどのように光合成に影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。アグロバクテリウム法により作出され、王子ホールディングス株式会社より譲与されたユーカリ(Eucalyptus grandis×urophylla)の過剰発現体を用いた。25℃、12時間明期/12時間暗期に設定した温室でユーカリの苗を栽培し、二日に一回250mlの灌水と一週間に一回250mlのホーグランド溶液の施肥を行った。EcHB1過剰発現体の葉のSPAD値、水利用効率、最大光合成速度、最大同化速度、電子伝達速度はコントロールよりも大きかった。過剰発現体の葉肉細胞は増強されており、空隙率がコントロールより低く、葉肉細胞の表面積もコントロールより大きかった。以上の結果から、EcHB1過剰発現個体の光合成能力の向上は葉肉細胞の増強によるものであることが強く示唆された。また、EcHB1過剰発現体は水利用効率も高いことから、乾燥耐性が改善されていると考えられる。


日本生態学会