| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-110 (Poster presentation)

イチヤクソウ(ツツジ科)の菌根菌選好性は地域によって変化するか?

*上杉天志(三重大院・生資), Chien-Fan Chen(台湾行政院農業委員会), Man Kyu Huh(東義大), 谷川東子(森林総研・関西), 瀬井龍蔵(アドウイング), 橋本靖(帯畜大), 谷亀高広(国立科博・植物園), 村田政穂, 奈良一秀(東大・新領域), 松田陽介(三重大院・生資)

菌根菌から炭素源を得て生育する無葉緑性の植物を菌従属栄養植物という.菌従属栄養植物は菌根菌に対して高い特異性を示し,限られた系統の分類群と共生する.緑色性のイチヤクソウ(ツツジ科)は一部の炭素源を菌根菌から得る部分的菌従属栄養植物である.中部・近畿地方に生育する本種個体群では,外生菌根菌のベニタケ属菌が根に優占的に定着することが示唆された.これはイチヤクソウがベニタケ属菌に対して高い特異性をもち,他の分類群より選好的に定着したためである可能性がある.本研究では,イチヤクソウの自然分布を反映させた広い分布域における本種の菌根菌選好性を調べることを目的とした.そのために,日本,韓国,台湾にわたる3ヵ国5地域から34個体のイチヤクソウを採取し,分子解析によって主要な菌根菌を推定した.採取した各個体の根系を実体顕微鏡下で観察し,根の表皮細胞内に菌糸コイルの形成が確認された部分を菌根として切り出した.菌根断片からゲノムDNAを抽出し,菌特異的プライマーを用いてITS領域をPCR増幅,クローニング,RFLPタイプ分けし,代表サンプルの塩基配列をシークエンサーにより決定した.得られた配列は97%閾値で分子操作的分類群(MOTU)に類別し,BLAST検索した.現在までの解析で,主にベニタケ科,イボタケ科などの外生菌根菌が検出され,地域・個体によって異なる菌根菌が優占する傾向があった.得られるデータにもとづき,イチヤクソウの分布と優占した菌根菌の系統関係について議論する.


日本生態学会