| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-157 (Poster presentation)

外来草本ブタクサにおける性配分の日米間比較

*中原亨(九州大・システム生命), 深野祐也(農工大・農), 矢原徹一(九州大・理)

植物は獲得した資源を栄養成長と繁殖成長に投資し、両性植物ではさらに繁殖資源をオス機能とメス機能に分配する。これを性配分という。風媒花においては、性配分は個体サイズの増加に依存してオス機能に偏るとされており、現実に大型の個体ほどオス機能に偏った性配分が観察されている。それに加えて、風媒花ではオス機能・メス機能への投資量には遺伝的変異が存在し、比較的高い遺伝率を示すことも明らかになっている。この遺伝的変異の存在は、性配分が自然選択によってサイズ依存的に進化する可能性を示すものである。しかし、実際に自然選択が働いて、性配分がサイズ依存的に進化した例は未だ報告されていない。本研究で我々は、北米原産の一年生風媒草本であるブタクサAmbrosia artemisiifoliaの実験集団を用いて、原産地-侵入地間で性配分が変化しているかどうかを検証した。ブタクサは侵入に伴って天敵のブタクサハムシから解放されるという環境の変化を経験したことで、草丈が遺伝的に増加していることが明らかになっており、性配分にもサイズ依存的な進化が起きている可能性がある。我々は2013年3月から11月にかけて、同一の圃場内にて原産地アメリカのブタクサ5集団と侵入地日本のブタクサ3集団の鉢植えを栽培し、最終的な草丈を計測後、各株の地上部を切り取って回収し自然乾燥させた。次に我々は、乾燥試料を成長器官(葉・茎)とオス器官(雄花)とメス器官(種子)の3つに分け、それぞれの重量を計測した。これらの値をもとに、サイズ増加に伴うオス機能投資量・メス機能投資量の変化を産地間で比較した。しかし計測の結果、産地間でサイズ依存的な変化に大きな傾向の違いは見られなかった。今回の結果からは、性配分が侵入に伴って進化しているという仮説を支持する証拠は得られなかった。


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