| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-174 (Poster presentation)

新規寄生蜂抵抗性因子と細胞性免疫応答:ショウジョウバエにおける遺伝学的スクリーニング

*吉田雅(岡大・環境生命),高橋一男(岡大・環境生命)

捕食寄生蜂は寄生により寄主を死に至らしめるため、寄主となる昆虫は様々な寄生蜂抵抗性を進化させている。細胞性免疫応答の一つである包囲化作用は、その中でも主要な抵抗手段である。包囲化作用には異なる働きを持つ3種類の血球が関与することが明らかになっており、その免疫機能については詳細に研究が行われているが、遺伝的基盤には未解明な点が多い。発表者らのこれまでの研究によって、キイロショウジョウバエの幼虫に内部寄生する寄生蜂(Leptopilina japonica)に対する包囲化作用に関与するゲノム領域が特定されている。このゲノム領域を欠失させると、寄生時に包囲化作用が起こらなくなるため、この領域には免疫応答の開始(異物の認識)もしくは、血球の分化(血球数の増加)に関わる抵抗性因子が存在する可能性が示唆されている。本研究では新規の寄生蜂抵抗性因子が、細胞性免疫応答のどの過程で機能するのかを調べるため、当該抵抗性因子を含むゲノム欠失が異物侵入後の3種類の血球の数および、包囲化作用の有無に与える影響を評価した。実験には、キイロショウジョウバエのゲノム欠失ライブラリーより、遺伝的背景の同一な欠失系統と対照系統を選んで使用した。異物認識能および、血球分化能への影響評価のため、(1)L. japonicaに寄生された幼虫、(2)人工的異物(パラフィンオイル)を注入した幼虫、(3)対照処理の幼虫の3実験処理下の幼虫について、3種類の血球数および包囲化作用の有無を測定した。本発表では、これらの実験の結果に基づいて、新規寄生蜂抵抗性因子の作用機構について議論したい。


日本生態学会