| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-175 (Poster presentation)

単為生殖種の遺伝的多様性:小笠原および琉球におけるオガサワラヤモリのマイクロサテライト解析

*村上勇樹, 菅原弘貴, 林文男(首都大・生命)

オガサワラヤモリは、太平洋、インド洋の島々に広く分布するヤモリの一種である。この種は雌のみの単為生殖を行うことが知られている。そのため、漂流や人為的移入によって分布を拡大させており、日本国内では、小笠原諸島、南西諸島に分布している。また、オガサワラヤモリには複数のクローンタイプが世界中で報告されており、これは2倍体のものと3倍体のものに大別される。しかしながら、日本におけるオガサワラヤモリのクローン多型について、DNA解析に基づく詳細な研究は行われていない。そこで、マイクロサテライトDNAを用いて、日本全国におけるオガサワラヤモリの遺伝的特性について解析した。小笠原諸島(北之島、聟島、嫁島、兄島、西島、父島、母島、平島、硫黄島)、大東諸島(北大東島、南大東島)、沖縄本島、八重山諸島(石垣島、黒島、竹富島、西表島)の全16島からオガサワラヤモリの採集を行った。捕獲した個体は尾の先端を自切させ、DNA解析用の試料として99.5%エタノール瓶に入れて持ち帰った。その後、DNAを抽出し、マイクロサテライトDNA解析を行った。プライマーについては既に報告されている5遺伝子座を用いた。それぞれのサンプルを解析した結果、小笠原諸島からは2種、大東諸島からは11種、沖縄本島から1種、八重山諸島から3種の遺伝的に異なるクローンが見出された。これらの多くが背面の色彩パターンの違いから識別可能であった。小笠原諸島、沖縄本島、石垣島、黒島、西表島のクローンはすべて南太平洋の島々で広く分布が確認されているクローンと体の斑紋および倍数性が同じであったことから、南方からの移入によるものと考えられる。一方、竹富島の1クローン、大東諸島の9クローンは日本固有のクローンであると考えられ、形態から指摘されていたように、これらの島内で独自に分化した可能性が高い。


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