| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-003 (Poster presentation)

落葉散布プロセスを考慮した落葉分解速度のホーム・フィールド・アドバンテージの定量

*松下通也 (森林総研・林育セ), 坪田裕希, 星崎和彦 (秋田県立大)

林床を覆う落葉リターは、森林生態系の栄養循環を決める本質的要素だが、その種構成は空間的に不均一である。本研究では、渓畔林構成樹種の落葉散布パターンによって影響を受ける林床リターの樹種混合の程度が、落葉分解速度にどう影響するか評価した。

ブナ・ミズナラ・イタヤカエデ・トチノキ・サワグルミ・カツラの六樹種の落葉を回収し、三つの混合タイプ(単一種・二種混合・六種混合)のリターバックを作成した。二種および六種混合のリターバックでは、各樹種の落葉を等量ずつとなるようバックに投入した。これら三タイプのリターバックを、林内の主要樹種の樹幹近傍(マイクロサイト)に設置し分解速度(重量減少率)を定量した。

その結果、落葉の分解速度の平均値は、リターバックを設置したマイクロサイト間で有意に異なったが、三つの混合タイプ間では有意に異ならなかった。一方、分解速度のマイクロサイト間のバラつき(変動係数)は混合タイプ間で異なり、六種混合、二種混合、単一種バックの順に変動係数が小さかった。続いて、リター混合による分解速度の加速的応答・減速的応答を各樹種ごとに評価した。その結果、単一種バックでは落葉分解速度の遅かったブナ・トチノキは、混合タイプ間で分解速度はほぼ変わらなかった。一方、イタヤカエデ・カツラは、ほかのどの5種との混合であっても、落葉分解速度は加速的応答を示した。単一種バックでは分解速度の高かったサワグルミは、ブナ・トチノキとの落葉混合によって特異的に分解が遅くなった。

本研究の結果より、落葉の散布パターンによって影響を受ける林床リターの樹種混合は、分解速度の林分全体平均に対する影響は限定的であるものの、分解速度の空間変動に対してより強く作用する可能性が示唆された。


日本生態学会