| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-006 (Poster presentation)

海岸の砂嘴に成立したウバメガシ群落とハマボウ群落

*冨田美紀,甲野裕理,徳岡徹,増澤武弘(静岡大・理)

西伊豆安良里の海岸には、海水の作用によって削られ運搬された礫が堆積して形成された砂嘴がみられ、砂嘴は海に突出し、砂嘴上には植物群落が成立している。そこで本研究では、海水や潮風の塩分の影響を受けながら、砂嘴上に成立している植物群落の構造と土壌塩分濃度の関係を明らかにすることを目的とした。

植物群落で優占する樹種を明らかにするため、砂嘴の内海側から外海側まで、10m×40mのコドラートを設け、樹木のマッピングと樹木の胸高断面積合計の測定を行った。砂嘴上では、内海側ではハマボウが、外海側ではウバメガシが優占する構造であることが示された。

砂嘴の地形の特徴を明らかにするために、地表面高の計測を行った。地表面は平坦ではなく、内海側では低く、外海側へ向かって高くなり、差は約140cmあることが示された。

砂嘴上の土壌塩分濃度と植生の関係を明らかにするために、コドラートとは別に、内海側から外海側までベルトトランセクトを設け、土壌塩分濃度の測定と、ウバメガシとハマボウの実生の個体数の計測を行った。土壌塩分濃度は内海側約15mの範囲で高い値(5~12mS)を示したが、それ以外の範囲では0又は1mS以下の低い値を示した。ハマボウの実生は内海側のすぐ近くでは観察されなかったが、13m-21mまでの範囲で多く分布していた。トランセクト上で合計約100個体観察された。また、ウバメガシの実生は3本のベルトトランセクト上で合計7個体観察された。

土壌塩分濃度とハマボウの実生の分布には関係性がみられ、塩分濃度0.01から10.18mSの間でハマボウの実生の分布が見られた。

内海側でハマボウが優占し、外海側で見られないため、実生や植生との関係を明らかにするために、更に土壌構造の解明が必要である。


日本生態学会