| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-010 (Poster presentation)

広島県宮島における常緑広葉樹林の7年間の植生変化

*宮尾祐子,山田俊弘,奥田敏統(広島大・総)

常緑広葉樹林は西日本を代表する植生であるが、現存するほとんどの森林が人の手の入った二次林である。この二次林化した常緑広葉樹林の森林構造や森林動態などはほとんど知られていない。本研究の調査地とした広島県宮島の森林は、他の瀬戸内島嶼部と同様に山火事や農地開拓などの人為的攪乱を受け続けてきたが、その強度は比較的弱く、常緑広葉樹を主体とする二次林が島の森林面積の91 %を占めている。本研究では、7年間の宮島の常緑広葉樹二次林の植生変化を明らかにした。この森林は植生が地形に大きな影響を受けることが知られており、森林動態も尾根、斜面、谷の3つの地形タイプ別に解析を行った。宮島の北東部に0.6haの調査区を設置し、胸高直径4.7cm以上の個体を対象とした毎木調査を、2007年8月と2014年5月の2回行った。調査対象は調査区に20本以上出現した14種とし、それらの7年間の成長速度、死亡速度、加入速度、個体群増加速度、BA増加速度を、調査区全体と尾根・斜面・谷の地形区分ごとに算出した。

尾根では成長、加入、死亡速度の全てが他の地形より速かった。最も個体数が多かった種は、2007年はアカマツであったのが、7年後にはソヨゴとなっていた。個体群増加速度から、今後アカマツの個体はさらに減少しネジキやソヨゴの優占度が増すことが予想された。斜面は死亡速度が最も低く、調査対象の14種全てが出現した。最も個体数の多かった種は2007年と2014年共にミミズバイであった。個体群動態は谷と尾根の中間的であり、尾根から谷にかけての移行帯としての性質が表れていた。谷では個体数は減少していたがBAは増加しており、自然間引きが進んでいることが示された。優占種は2007年と2014年共にミミズバイであった。林床には十分な光が届いておらず、新規加入個体がほとんどなかったため、今後もミミズバイが優占し続けると考えられる。


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