| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-016 (Poster presentation)

異なる人為圧下の奄美大島照葉樹林植生

*石貫泰三(鹿大 理工),鈴木英治(鹿大 理工)

鹿児島県奄美大島の森林の大部分は人為圧を受けた二次林である。人為圧は森林の種多様性に影響するが、集落周辺などの人為圧の高い地域の森林を調査した例はまれで、その影響が明らかになっていない。本研究では奄美大島において人為圧の高い地域と低い地域を比較し、その影響と森林の遷移過程を研究した。

調査地は奄美大島龍郷町秋名(人為圧高)、住用町神屋(人為圧低)である。秋名の集落近くにA1(40 m×40 m)、遠ざかるにつれてA2~A4(20m×20m)を、神屋にK1、K2(40m×40m)を設置し、プロットの内の維管束植物(DBH≧1cm)の種名、DBH、樹高を記録した。出現種は4つのギルド(原生林性種、二次林性種、落葉種、ブナ科種)に分類した。

調査で出現した種は107種(原生林性種48種、二次林性種38種、落葉種18種、ブナ科3種)だった。K1~2の出現種数はA1~4に比べ多かった。特に原生林性種がK1~2に比べA1~4では少なかった。垂直構造を見ると、K1~2とA4ではスダジイが主に高木層に存在、優占した。A2~3ではリュウキュウマツとスダジイが優占し、スダジイは高木層で、リュウキュウマツは林冠から突出し存在した。畑放棄地のA1にはスダジイが皆無で高木層に落葉種が優占した。A1~4の優占種のうち落葉種やリュウキュウマツは低木層ではまれだった。

人為圧は種多様性に影響し、特に原生林性種が影響を受けた。A1のようなスダジイが存在しない地域では落葉種が遷移初期に優占し、ほかの地域はスダジイが優占する。スダジイはK1~2でも優占しており、遷移早期に回復し、二次林から原生林まで優占し続けると考えられる。A2~3ではリュウキュウマツが林冠から突出して存在し、撹乱後にリュウキュウマツが進入、優占したと考えられる。落葉種やリュウキュウマツは低木層にはまれであり、更新できずに次第に失われスダジイが優占するだろう。


日本生態学会