| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-019 (Poster presentation)

津波被災後の農地復旧・作付過程が埋土種子集団に与える影響

*西村愛子,浅井元朗,渡邊寛明(中央農研)

作物生産の場である農地において,生産性向上のための適正な雑草管理が必要とされる.圃場内に生育する雑草群集は,作付けや耕起,草刈や除草剤散布など常に小規模な人為撹乱の環境下に置かれている.そのため,耕種体系をはじめ圃場管理の種類や頻度・強度といった撹乱の規模は,発生する雑草群集に大きく影響することが知られている.圃場における雑草の発生源となる土壌中の埋土種子集団は,当年に生産された種子やそれ以前に散布された種子の貯蔵源となるため,過去の圃場内に発生した雑草群集の履歴を表す一つの指標とされる.

2011年3月11日の東日本大震災により宮城県仙台平野では,多くの農地が津波による冠水や土砂堆積などの甚大な被害を受けた.被災農地は地震や津波による直接的な被害に加え,営農再開に向けた圃場整備や除塩作業などの復旧工事による継続的な撹乱環境下にあった.管理の遅延や作付開始時期の違いは,圃場における雑草群集が経験する撹乱規模や種類の違いと考えらえる.撹乱の種類や規模によっては,雑草の発生量の増減に影響をおよぼし,種子生産量の増加や侵入種の定着促進を招く可能性も考えられる.撹乱の規模による埋土種子集団におよぼす影響を理解することは,今後の農地管理技術や雑草防除技術に有益な情報を提供することができるだろう.

本研究では,津波被災農地において復旧作業や作付開始時期の異なる圃場を対象として,2013年から2014年の2年間にかけて埋土種子集団の調査を行った.津波被災や復旧作業から作付に至るまで,強度の異なる撹乱環境が埋土種子集団のサイズや組成に与える影響を検証した.


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