| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-029 (Poster presentation)

北方アラスカの植生推移パターン

*露崎史朗(北大・院地球環境)・小島覚(北方生態環境研究学房)・成田憲二(秋田大・教育文化)・斉藤和之(JAMSTEC)

アラスカには広範に永久凍土が分布し、その上に発達している二大生態系であるツンドラとタイガ(北方性針葉樹林)の温暖化に伴う衰退や消失が懸念されている。そこで、ツンドラ・タイガの群集構造と凍土を含めた土壌特性との対応を知るために、2000年にプルドベイからフェアバンクスにかけ、ダルトン・ハイウェイに沿い、植生・土壌断面の記録がなされた。その結果、ブルックス山脈を境に、山脈北側ではツンドラが南側ではタイガが卓越し、山脈北側では土壌の層分化が未発達なのに対し南側では層分化が認められることが明らかとなった。これらのことは、永久凍土の変化に伴い水収支が改変されれば植生に変化が起こる可能性が高いことを示している。これらの知見を踏まえ、2014年夏に、2000年調査区に近接した地点で新たに調査区を設置し、植生調査と土壌水分の測定を行った。2014年は、ハイウェイ沿いに8か所の調査区を設置し、各調査区で50 cm × 50 cmの方形区を32個設け測定を行った。

植生調査の結果をもとに得た各方形区の維管束植物の総被度、種数、種多様性は、最北端のプルドベイ付近で低い値を示したのを除き、大きな変化は認められなかった。コケ・地衣類の被度は、北に向かって徐々に減少した。多次元尺度構成法により各方形区の得点を求めたところ、一軸には緯度が、二軸には標高と土壌のA層の厚さが関与していることが示された。A層の厚さは、標高と負の関係があった。したがって、二軸については、A層の厚さに関連している土壌水分や栄養分が関係している可能性が高い。以上のことから、アラスカでは、種構成はタイガ構成種からツンドラ構成種に入れ替わるが、維管束植物の群集多様性は変化していないこと、凍土融解に伴う土壌水分動態を明らかとすることの必要性が示唆された。


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