| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-033 (Poster presentation)

ゲノムワイドSNPデータに基づくハクサンハタザオの系統地理解析

*久保田渉誠(日大・生物資源,東大・院・総合文化),岩崎貴也(京大・生態研),三浦憲人(ホシザキグリーン財団 ),永野惇(京大・生態研),花田耕介(九州工大,理研CSRS),彦坂幸毅(東北大・院・生命),伊藤元己(東大・院・総合文化),森長真一(日大・生物資源)

ハクサンハタザオは日本において北海道から九州までの広い範囲に分布する自家不和合性の草本植物である。標高2000mを超える山岳域に生育することから高山植物としても知られているが,低標高域にも広く分布し,農地そば,法面,崖,河原,林内,林縁など様々な環境に生育している。本研究は多様な環境に適応を果たしたと考えられるハクサンハタザオを対象に,ゲノムワイドSNP情報をもとにした系統地理解析を行い,集団分化の歴史的背景の解明を目指した。

全国80地点からそれぞれ1個体ずつを次世代シーケンサーで解析し,1個体あたり全ゲノム(255Mbp)の10倍量を超えるショートリードデータを得た。10万を超えるSNP(一塩基多型)遺伝子座を利用して集団構造を解析した結果,本種は中部地方と東北地方を境に,南北2つの分集団に分けられることが明らかになった。この遺伝的分化パターンは他の日本産高山植物で報告されているものと一致することから,本種でも氷期における分布拡大と,間氷期における高地への退避によって集団分化が生じたと考えられる。また,南北の分集団間では気温を中心として生育環境が大幅に異なることから,適応的形質も遺伝的に分化していることが予想される。実際,集団構造を考慮した上で環境と遺伝子型のゲノムワイド関連解析を行ったところ,光周性などの遺伝子が自然選択を受けて分化していることが示された。さらに,コアレセント解析による集団動態の推定についても報告する。


日本生態学会