| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-047 (Poster presentation)

センダングサはなぜいなくなったのか-標本データから分布変遷を推定する-

*吉崎雄宏(1),高倉耕一(1),西田佐知子(名古屋大博物館),西田隆義(1) 1滋賀県大・環境

近縁種は同所的に共存しない場合が多い。このような近縁種間には、生息場所をめぐって他種を駆逐し得る何らかの相互作用が存在すると考えられる。しかし、近縁種排除のメカニズムは未だ明らかになっていない。キク科センダングサ属(Bidens)の近縁種、センダングサ、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、コシロノセンダングサは日本に別々に侵入し、近縁種間での駆逐を複数回経験していると考えられる。本研究では、センダングサ属の侵入と分布拡大の歴史を、種間にはたらく花粉干渉と資源競争の方向性・強度と比較することで、過去の分布変遷を合理的に説明できるか検討した。

標本調査、文献調査、分布調査を通して、センダングサ属の分布変遷について推定し、侵入の時期と順序、分布を拡大した順序について明らかにした。さらに、人工授粉実験によって花粉干渉を、混植栽培実験によって資源競争を検証し、相互作用の方向性とその強さについて明らかにした。これらの結果を踏まえて、分布変遷の推定結果の妥当性と、花粉干渉と資源競争が分布変遷に与えた影響を検討した。分布変遷を推定した結果、分布の拡大過程はある程度把握することができた。花粉干渉と資源競争を検証した結果、花粉干渉が存在したすべての組み合わせでは、過去に駆逐生じているのに対して、資源競争が存在しても過去に駆逐が生じていない組み合わせが存在した。すなわち花粉干渉を取り入れることではじめてセンダングサ属の分布変遷を説明することができた。得られた結果に基づいて、標本や文献を使った分布変遷の研究の利点と限界についても考察する。


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