| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-067 (Poster presentation)

異なるCO2濃度で育成したシロイヌナズナエコタイプの形質と生息地環境の関係

*尾崎洋史(東北大・院・生命科学), 彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)

環境に適していない表現型をもつ植物は排除され、特定の範囲内の表現型をもつ植物のみが生存できるので、ある環境とその対象となる形質には関連があると期待される。これまでに、少数の環境と少数の形質の組合せから環境と形質について多数の研究が行われた。しかし、これらの研究からある形質が様々な環境要因の中でどの環境に制限されるのか、また、ある環境要因が様々な形質のうちどの形質を制限するのかを知るのは困難である。これを解決するには多数の形質を様々な組合せの環境要因で解析する必要がある。そこで、我々は様々なエコタイプの窒素分析を含む詳細な成長解析とガス交換測定から得た29の形質データ(Oguchi et al. 投稿中)と、それぞれのエコタイプの9の生息地環境の推定値を用いて形質と環境の関係を解析した。

通常CO2濃度下では16の形質で環境との関係が検出され、その中で気温が最も多くの形質と関係が検出さた。個々の関係に着目すると、降水量と葉重/個体重(播種後25日)、個体重(25日)、個体重(38日)に正の関係があるなどの興味深い関係もあった。これは低降水量由来エコタイプは水獲得のために成長初期に地下部へ過剰な投資を行ったために個体重が低下したことを示唆する。高CO2濃度応答と環境の間にも様々な関係が検出された。例えば、標高と光合成速度、純同化速度、相対成長速度には負の関係があり、これは生息地標高が高いほど光合成速度の高CO2応答が弱く、純同化速度が低下したため相対成長速度が低下したと考えられる。以上より、環境と形質の関係に成長解析の視点を導入することや異なる環境で栽培した表現型の比を解析することで意味のある関係を検出できる可能性があるといえる。


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