| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-073 (Poster presentation)

落葉広葉樹林の林冠構成種5種のシュート形態と受光効率の関係

*長田典之, 日浦勉(北海道大FSC・苫小牧研究林)

森林には樹形の異なる多数の樹種が共存する。光条件は樹木の成長や生存に大きく影響するため、樹形と葉の受光様式には密接な関係があると考えられてきた。例えば、林床やギャップにおいて、樹形の異なる種間では葉のサイズや角度などの樹形形質には差があるものの、葉の配置効率(被陰されていない葉の面積/総葉面積)は一定の範囲に収斂する(Ackerly 1996; Valladares et al. 2002)。一方、強光下では葉を傾けて受光量を減らし葉温を下げて光阻害を防ぐ傾向があるが、弱光下と同様に受光量が個体の生産性や成長量に影響する。ただし、アクセスの難しさから、林冠の多樹種についてシュート形態と受光様式の関係を詳細に解析した例はない。林冠樹種について、さまざまな樹形形質が受光量に及ぼす相対的な影響の強さを整理し、受光効率(投資バイオマスあたりの受光量)の種間差を明らかにすることは、森林の生産の大部分を占める林冠における樹形の多様性の意義を理解する上で重要である。

本研究では、北海道大学苫小牧研究林において、林冠構成種5種の当年枝の形態と物質分配、個葉の受光量の関係を調べた。とくに、葉のサイズ、角度、分枝頻度などの樹形形質が葉の受光量に及ぼす相対的な重要性を整理し、当年枝あたりの受光効率の種間差を明らかにした。

この結果、当年枝重や葉サイズは種によって大きな差があり、葉サイズと分枝頻度には負の相関があった。個葉の受光量には葉の角度の影響が最も大きかった。また、葉サイズが大きい種ほど当年枝あたりの光獲得量が大きかった。受光効率の種間差は当年枝重や葉サイズの種間差よりもずっと小さく、おもに葉の受光量の差が影響していた。以上の結果をもとに、林冠におけるシュート形態の多様性の意義について考察する。


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