| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-080 (Poster presentation)

コナラの葉群分布構造と光環境

*右田千春,千葉幸弘(森林総研)

林冠の葉群分布は、森林生態系において、生理生態的機能における重要な役割を担っている。森林林冠における空間分布構造を定量化するため、コナラ林分の3次元的な分布構造を解析した。林冠へのアクセスタワーを利用して,林冠を1辺50cmの立方体(キューブ)に区分し,得られた断層構造の図から林冠の葉面積密度LADと相対光強度RIの空間分布を示すとともに、林冠における不均質性を明らかにした。特に葉量が濃密に分布する林冠中層ほどLADとRIの変動幅が大きく,13.0m〜14.0mの林冠層ではRIが最大96.0%から最小1.2%までの明るい場所と暗い場所が混在した。林冠の不均質な構造をもたらす理由は,樹冠の発達とともに形成される葉群クラスターによると考えられる。コナラは仮軸分枝するため,樹冠の発達とともに葉群クラスターを形成しやすい。それにも関わらず光環境は不均質な構造を決定づけている。小さいスケールで見ると、葉面積の空間的な分布は、一見無秩序であるが、林冠上層から積算して得られる積算葉面積と林冠層ごとの平均相対光強度RIとの間には明瞭な相互関係が認められた。この関係は植物群落の光透過に関するBeer-Lambert則に単純に従うものではないが,このことは、葉群クラスターをはじめとする林冠の不均質な構造が林冠内の入射光量を増減させていると考えられた。今回得られた構造的な計測結果を利用することによって、森林の環境応答や生理生態的機能の評価の精度を上げることが可能となる。


日本生態学会