| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-096 (Poster presentation)

分子フェノロジー:網羅的遺伝子発現の季節解析

*工藤洋(京大・生態研), 永野惇(京大・生態研,JST・さきがけ), 川越哲博, 本庄三恵, 杉阪次郎 (京大・生態研)

フェノロジーとは、季節に応じて見られる生物現象であり、植物では開花・結実・展葉などが毎年決まった時期に観察される。私達は、アブラナ科の多年草ハクサンハタザオを対象に遺伝子発現の季節変化(分子フェノロジー)の研究を進めている。全遺伝子を対象とした網羅的遺伝子発現をトランスクリプトームと呼ぶが、その解析手法は、測定の標準化・現象の網羅性の両面で優れており、その季節データを得ることは、植物の季節応答を理解するうえで重要である。私達は、ハクサンハタザオの自然集団において、約2万の遺伝子について2年間の季節変動データを得た。また、春分・夏至・秋分・冬至のトランスクリプトーム日内変動データをも取得した。これらのハクサンハタザオの2年間発現データの1次解析を終え、発現量上位の数千遺伝子について遺伝子発現のモデリングを実施した。その結果、季節応答をする遺伝子をリストアップした。例えば、開花タイミングの制御に関連する約200の遺伝子のうち、季節応答をしている遺伝子が22であることが明らかになった。また、開花応答遺伝子だけでなく、様々な遺伝子の季節応答が明らかになった。例えば、時計遺伝子の季節変化パターンも初めて明らかとなった。トランスクリプトームの季節変化データを紹介するとともに、分子フェノロジー研究の展望について議論する。


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