| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-138 (Poster presentation)

北方林・亜高山帯林におけるモミ属・トウヒ属数樹種の稚樹成長と林床環境の関係

*西村尚之(群馬大・社会情報),赤路康朗(岡山大・環境生命),鈴木智之(東大・秩父演),清野達之(筑波大・生命環境),星野大介(国際農研),杉田久志(森林総研・四国),松下通也(森林総研・育種セ),中川弥智子(名大・生命農),原 登志彦(北大・低温研)

北方林・亜高山帯林におけるモミ属・トウヒ属の稚樹成長に及ぼす林床環境(林床入射光,マイクロサイト,林冠状態,稚樹混みあい度)の影響を明らかにするために,北海道東大雪,岐阜県御嶽山,長野県北八ヶ岳の三つの老齢林分に設置した面積1haの各調査区内において,樹高≥0.5mまたは≥1.3mの幹を対象とした毎木調査と5m×5m区画の林冠状態(閉鎖,ギャップ)の調査を行った.本報告では,大雪2008-2013,御嶽山2009-2012,北八ヶ岳2007-2012における各期間の樹高成長を解析し(樹高≤2mを対象),2010年に御嶽山,2011年に北八ヶ岳,2012年に東大雪で撮影された5m×5m格子の各交点441カ所の全天写真から林内光入射割合を推定した.成長解析の対象とした樹種は,北方林ではトドマツ,エゾマツ,アカエゾマツ,亜高山帯林ではシラビソ,オオシラビソ,トウヒとした.GLM解析の結果,どの樹種でも稚樹成長に及ぼすギャップやマイクロサイトの影響は小さかった.一方,エゾマツとトドマツの成長は散乱光入射割合に,アカエゾマツでは直達光入射割合に影響される傾向があった.また,亜高山帯のモミ属2種の成長には散乱光入射割合と稚樹混みあい度の影響が,トウヒでは散乱光入射割合の影響が強いことが示された.以上から,亜高山帯林では林床環境に対する稚樹成長の応答には樹種間の明確な違いは検出されず,北方林では稚樹成長と光環境との関係において樹種による違いがあることが明らかとなった.


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