| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-145 (Poster presentation)

スギ高齢林における埋土種子分布とその環境要因

*山瀬敬太郎,伊東康人,藤堂千景(兵庫農技総セ)

針葉樹人工林の収穫は長伐期化する傾向にある。また,伐採し搬出されたとしてもその後植栽されるとは限らず,伐採後の植生回復の遅れが懸念される。そこで,伐採地の植生回復材料として重要な役割を果たす埋土種子に着目し,長伐期化に伴う高齢林において埋土種子相の特徴を解析した。

調査地は,兵庫県宍粟市の赤西国有林である。スギ高齢林(42齢級,平均樹高30.8m)と,そのギャップに位置するスギ壮齢林(平均樹高18.2m)を含む形で,斜面の水平方向120m,上下方向10mの範囲内に計75地点(水平25地点☓上下3地点,地点間距離は約5mの格子状)の森林表土採取地点を設定し,実生出現法によって採取表土に含まれる埋土種子相を推定した。また,各地点から半径30mの範囲内を毎木調査地とし,その中に位置する木本種の成木(高さ2m以上)を対象に,立木位置と胸高直径を記録した。

実生出現法の結果,1地点当たりの出現種数は0-15種,埋土種子数は0-1,125個・m-2であり,対象林分の優占種であるスギは0-450個・m-2(平均41.3個・m-2)であった。出現した木本種は22種,1地点当たり平均10個・m-2以上みられたのは7種であった。そのうち,スギは高齢林,壮齢林に関係なく広く調査地内に分布する傾向がみられ,調査地内に成木がみられたフサザクラやコハクウンボク,ヤマボウシも広い範囲に分布していた。一方,調査地内に成木がみられなかったタラノキやクマイチゴ,ヤマウルシの先駆種の埋土種子は,高齢林内ではほとんどみられなかった。

今回の結果から,埋土種子由来の木本種群は,伐採跡地の早期の林地被覆植生として重要な役割を果たす(例えば,小谷2007)ものの,同一林相が長期間継続する高齢林の場合,埋土種子の寿命によって先駆種の種子数は少なくなり,植生回復の遅れが生じる可能性が示唆された。


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