| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-190 (Poster presentation)

節足動物における放射性セシウム集積と他元素との関係

*綾部慈子,金指努(名古屋大・生命農),吉田智弘(東京農工大・農),肘井直樹,竹中千里(名古屋大・生命農)

2011年3月の福島第一原子力発電所事故によって環境中へ拡散した放射性物質は,食物連鎖や物質循環過程を通じて生態系内の様々な生物へ移行しているが,その過程とメカニズムは明らかになっていない。植物では,セシウム(Cs)と同族のカリウム(K)の取り込みや生体内における挙動が類似していることが,放射性セシウムの吸収蓄積メカニズムとして知られている。より高次の栄養段階に位置する生物については,一般に微量元素の集積に関する知見は乏しく,Csとの関連性も未知である。本発表では,福島県内の森林において2012-2014年に採集した捕食性節足動物のジョロウグモを用いて,放射性Csと他の元素(アルカリ金属,微量樹金属元素)の集積状況を明らかにし,これら元素間の関係を考察した。また,同一森林で採取した植物と植食性昆虫間の放射性Csの移行についても,元素挙動の観点から調べた。その結果,体内に存在したKや微量元素であるルビジウム(Rb)や,ナトリウム(Na)と放射性Cs濃度との間には,正の相関関係が認められ,クモ体内でのこれらの元素挙動の類似性が示された。KやNaは動物にとって必須元素であるため,ジョロウグモの放射性Csの集積に与える影響は大きいものと考えられる。


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