| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-211 (Poster presentation)

衛星データを使った全球規模の土地利用変化が土壌呼吸量と炭素収支に与える影響評価

*安立美奈子(東大生研),伊藤昭彦(国環研),竹内渉(東大生研)

人為的な炭素排出のうち約2割は土地利用変化によるものと言われ、その主な要因は熱帯林の伐採や農地への転換であると言われている。本研究では、土地利用形態の変化が全球の土壌呼吸量にどのくらい影響するかを明らかにするため、2001年から2009年の9年間において全球規模での土壌呼吸量を日単位で推定した。土壌呼吸量の推定には、MODISから得られた4kmメッシュの土地被覆図、地表面温度、土壌乾燥度(KBDI)と、各生態系における野外調査で得られた経験式を用いた。本発表では、2001年と2009年を比較した結果を主に報告する。

MODISによる土地被覆図における「農地(CP)」と「農地と自然植生のモザイク(CN)」を合計した面積は、陸域生態系のおよそ1割を占めており、2001年に比べて2009年では約98×104km2減少した。CPの面積は増加したが、CNの面積が大きく減少し、サバンナなどに変わっていることから、耕作放棄地が増えている可能性が示唆された。一方で、面積が増加した生態系は、永久湿地、落葉針葉樹林、常緑針葉樹林であり、いずれの生態系も北米やロシア、北ヨーロッパで顕著に認められた。特に、落葉針葉樹林は混交や木性サバンナ、CNからの変化割合が高く、植林による面積増加の可能性が示唆された。ただし熱帯林の面積減少は認められなかった。

土壌呼吸量の推定にはまだ多くの問題があるが、農地における土壌呼吸量は、中央アフリカや南米、南ヨーロッパ、オーストラリア南部などで増加する傾向にあった。また、草原と灌木地における土壌呼吸量の推定値は、野外で報告されている値に比べて2〜3倍高く、推定方法の問題点が示唆された。


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