| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-212 (Poster presentation)

東部瀬戸内海における基礎生産

*安佛かおり・笠井亮秀(京大・フィ研),一見和彦(香大・瀬戸内研セ),山口一岩(香大・農),大美博昭・秋山諭(大阪環農水研),宮原一隆(兵庫水技セ),山本昌幸(香川水試)

近年,瀬戸内海では,栄養塩負荷削減に伴って富栄養化が解消しつつある.その一方で,ノリ養殖に対する栄養塩不足や魚介類の漁獲量減少など新たな問題が生じている.瀬戸内海においては,1960~90年代に広域で基礎生産速度が測定されているが,近年のデータは限られている.そこで本研究では,東部瀬戸内海で基礎生産量を測定し,栄養塩負削減に伴う基礎生産構造の変化を調べた.

大阪湾2地点・播磨灘2地点・備讃瀬戸2地点・燧灘1地点に定点を設け,2013年9月から2014年11月まで観測・実験を行った.各定点では,入射光の100・48・33・14・8.3%となる深度を透明度から推定し,採水を行った.基礎生産の測定には13C法を用いた.培養は2時間行い,温度は現場表層水温に,光強度は遮光フィルターにより減衰させ各採水深度での値にそれぞれ合わせた.

その結果,各調査日の基礎生産量(全観測点の平均値)は,2013年9月・11月,2013年2月・5月・8月でそれぞれ,0.82±0.47,0.63±0.21,0.27±0.14,0.22±0.17,0.51±0.45 gC m-2 day-1となった.2月・5月は全体的に低い値であったが,この傾向は過去の研究結果と同じであった.夏季および秋季の調査(9・11月,8月)では大きな地点間差がみられたが,9月・11月は播磨灘と備讃瀬戸,8月は大阪湾湾奥で高く,調査日ごとに特徴がみられた.各月の最大値は,1.0-1.6 gC m-2 day-1であり,これは1993-94年の夏季の最高値と同程度であった.以上のことより,東部瀬戸内海の基礎生産量には大きな変化は起きていないと推察される.


日本生態学会