| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-223 (Poster presentation)

河口干潟における落葉の分解過程と底生動物による利用状況

佐々木晶子・伊藤尚子・中坪孝之(広島大・院・生物圏)

河口干潟は高い生産性を有することが知られており、それは現地の藻類による活発な一次生産に加えて、河川を通じた陸域由来有機物の供給により維持されている可能性が考えられている。しかし、河口干潟における陸域由来有機物の挙動と役割については情報が限られている。そこで本研究では、河口干潟に供給される陸域由来有機物として、落葉(リター)に着目し、その分解過程と底生動物による利用状況を明らかにすることを目的とした。

調査は広島県呉市の黒瀬川河口干潟で行い、調査地上流に生育するヨシ(Phragmites australis)のリターを材料とした。リターバッグ法により、重量減少過程を調べるとともに、溶存酸素消費速度を指標としてリターの無機化速度とその温度依存性を測定し、重量減少に占める無機化量を推定した。その結果、リターバッグ設置1ヶ月後には、初期重量の約7割が残存するものの、3ヶ月後には約2割にまで減少した。発表では重量減少に占める無機化量についても推定し報告する。さらに底生動物によるリターの利用状況を明らかにするため、リターを入れたメッシュバッグを干潟に設置し、2週間経過後回収して、出現動物相を調べた。その結果、主に甲殻類、腹足類、端脚類が確認された。これら出現動物は、リターを生育場所として利用している可能性と、餌として利用している可能性が考えられる。そこで底生動物によるリター摂食の可能性を検討するために、リターと主な出現動物について、炭素・窒素安定同位体比分析を行った。発表ではこれらの結果を踏まえて、河口干潟に供給された落葉の挙動とその役割について考察する。


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