| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-007 (Poster presentation)

放棄水田畦畔の植物多様性は再生するのか −草刈実験による検討−

*長井 拓馬, 丑丸 敦史, 内田 圭,日置 千絵 神戸大院・人間発達環境

日本の水田畦畔に成立する半自然草地(里草地)は草原生植物の重要な生育地であるが、近年になり水田の約10%が耕作放棄され、里草地では高茎草本や木本の優占による植物多様性の減少が報告されている。放棄された里草地の再生に管理の再導入が必要であると考えられているが、日本においてその有効性を検証した研究例は少ない。本研究は、兵庫県神戸市と篠山市の管理放棄されている里草地を対象に、頻度および時期を変えた草刈管理を実験的に導入し、周辺の伝統的管理がなされている水田畦畔(伝統地)と比較することで、1年間で1)植物種数はどれだけ再生するか2)草刈の頻度や時期の違いで再生過程に差があるか3)実験開始前の放棄植生に依存して再生過程は異なるか、を明らかにすることを目的とした。

調査した里草地は、神戸市15地点、篠山市10地点、伝統地はそれぞれ11地点、7地点設けた。各調査地に横5m×高さ3~7mの実験区を、放棄継続(コントロール),6月草刈,8月草刈,6・8月2回草刈として4区設け、草刈再開前(3月)に放棄植生として優占植物とその被度(%)を記録した。植生調査は、6月と10月に,各区に0.5m四方の調査枠を4つ設け、出現した維管束植物の種名と頻度(調査枠を4分割,1から4にカテゴリー)を記録し、9月に調査枠毎に土壌水分を測定した。伝統地には調査枠を神戸市で44枠、篠山市で20枠設け、同様の調査を行った。

神戸市で80科292種、篠山市で57科197種が記録された。コントロール・草刈区・伝統地の植物多様性を比較した結果、草刈区ではコントロールに比べて種数が有意に増加したが、伝統地での種数には及ばなかった。草刈の頻度・時期によって再生種数は変わらず、また放棄時の優占植物との関係においては、ネザサが優占する程、再生種数が少ないことが示された。


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