| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-024 (Poster presentation)

多様性の減衰に見る中立モデルとランダムレプリケーター方程式の相似性

*小林 祐一朗, 嶋田 正和 (東大・総合文化)

従来の研究によって、多くの自然界の生物群集で、対数正規則を当てはめると希少種が理論値よりも多く出現する特徴的な種-個体数分布が報告されてきた。これを説明するために、パラメータの少ないモデルとして、ランダムな出生-死亡-移動分散を仮定した「中立モデル」(Hubbell, 2001)が提案されている。中立モデルには、均一な群集を仮定するHubbell (2001)の他に、多数の「島」を想定し、「島」間の個体の移動を制限する「空間明示モデル」もある(Economo et al., 2008)。これらのモデルは、自然生態系で一般的に見られる競争などの種間相互作用に立脚していないにも関わらず、多くの自然の生物群集の種個体数分布を定量的に説明することに成功してきた。本研究では、この中立モデルの「成功」を、種間相互作用を重視する視点から解釈するため、(1)多様度に関しては中立モデルに相似的な振る舞いが見られ、(2)パラメータが少なく、かつ(3)種間相互作用を含めるモデルを提案した。

(2)と(3)を満たすモデルとして、相互作用係数をランダムな定数としたレプリケーター方程式を用いる「ランダム群集モデル」が知られている(Tokita & Yasutomi, 1999)。そこで、種分化がない条件で、空間明示的中立モデルに対応させてランダム群集モデルに多数の「島構造」を導入した場合、島間での種の分布に異質性が高い時には、種数の減少をベキ関数で近似したときのベキ指数が、両モデル間で近くなることが観察された。

局所的な種分化は、島間の種分布の異質性を高める効果がある。したがって、両モデルに局所的種分化を導入すると、両モデルが種-個体数分布についても相似的な予測をする可能性がある。その場合、中立モデルの重要性が、中立性の仮定ではなく、移動分散の制限にあることを明らかにできる。


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