| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-062 (Poster presentation)

密度依存的な餌資源制限下におけるニホンジカの歯の摩滅速度と平均寿命の時間的な変化

*竹下和貴(農工大),石崎真理(農工大),高橋裕史(森林総研関西),吉田剛司(酪農学園大),伊吾田宏正(酪農学園大),池田敬(農工大),三ツ矢綾子(農工大),久保麦野(東大),梶光一(農工大)

密度依存的な餌資源制限下における草食獣の歯の摩滅速度の変化について、これまで多くの研究がなされてきた。しかし、先行研究の多くは異なる生息地間での個体群比較に基づいており、単一個体群での摩滅速度の変化と、その変化に影響する要因の検証は不足している。もし、ある生息地においてが草食獣が利用する餌資源が劇的に変化した場合、歯の摩滅速度は何に大きく影響され、どのように変化するのだろうか。また過度の歯の摩滅は個体の生存に大きく影響するとされているが、これも同様に、単一個体群での摩滅速度の変化に伴った個体群の生存パターンの変化を検証した事例はない。

そこで本研究では、個体群の爆発的増加と崩壊に伴って主要な餌資源が大きく変化した洞爺湖中島のニホンジカ(Cervus nipon)個体群の長期モニタリングデータを用いて、個体群の歯の摩滅速度と生存パターンの時間的変化を検証した。

1984年の個体群崩壊後、ニホンジカが短径草本や落葉を利用し、採食時に副次的に土壌粒子を多く摂取することで、歯の摩滅速度は以前より速くなっていた。そのため摩滅速度は、その時々に利用している餌資源の硬さ以上に、副次的に摂取する土壌粒子の量に影響を受けて変化すると考えられる。生存パターンも1984年を境に大きく変化しており、特に高齢まで生存する個体が著しく減少していた。以上の結果は、歯の摩滅速度と生存パターンが、単一個体群内でも大きく同調することを示している。


日本生態学会