| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-064 (Poster presentation)

中部山岳地域におけるヤマネの生息密度推定

*羽方大貴(筑波大・生物資源),門脇正史(筑波大・生命環境系),諸澤崇裕(自然環境研究センター),杉山昌典(筑波大・農林技術センター)

ヤマネGlirulus japonicus は1属1種の日本固有種で天然記念物に指定されている。しかし、本種の詳しい生息状況についての報告があるのは一部の地域に限られている。生息状況の客観的な評価をするための指標として生息密度が有効であるが、本種の生息密度を定量的に推定した研究は存在しない。本研究は長野県にある筑波大学川上演習林において巣箱によるヤマネの標識再捕獲を行い、空間明示型標識再捕獲モデルによる生息密度推定を試みた。本種の生息密度推定により生息状況を客観的に評価するための基準となる情報を得ることを目的とした。11回の調査で延べ100個体のヤマネが捕獲された。生息密度の推定値は1.93±0.35 個体/haあった。本種の生息密度推定値についての報告がないため直接比較することはできないが、これまでいくつかの地域で行われてきた巣箱調査の結果の値(捕獲数/ha)と比較すると、本調査地の生息密度は比較的高いと考えられる。また、今回得られた生息密度推定値は同じヤマネ科で本種と体重が同程度のヨーロッパヤマネの生息密度推定値に比較的近い値である。一方、本種と体重が同程度で、かつ同所的に生息するヒメネズミと比べると、ヤマネは体重のわりに生息密度が低い。この傾向はヨーロッパヤマネでも同じである。今後さらなる情報の蓄積が必要なものの、今回得られた生息密度推定値を用いれば、各地で同様な方法で推定された個体群の大きさについて評価することが可能となる。このような比較検討によって、地域個体群ごとの生息状況を把握し、その状況に合った適切な保全策に生かすことが望まれる。


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