| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-065 (Poster presentation)

クローナル個体群間の競争と共存 -Daphnia pulexを用いた野外実験による検証

*八巻健有, 八巻圭佑, 牧野渡, 占部城太郎(東北大院・生命)

ミジンコDaphnia pulexは、我が国の池沼に広く分布する動物プランクトンである。私たちの調査によれば、日本に生息するD. pulexはすべて絶対単為生殖型の生活感を有しており、通常の繁殖のみならず、不適な環境を回避するための休眠卵生産までも、メス個体のみによる単為生殖で行う。すなわち、日本産D. pulexにはクローン間での遺伝子交流が存在しない。しかし、1池沼で複数のクローンが恒常的に出現することは稀ではなく、そのような池沼では独立したクローナル個体群を形成している。一般に、動物プランクトンは同じ植物プランクトンを餌とするため植食者間での消費型競争が激しいと考えられているが、種内競争は種間競争よりさらに激しいはずである。それにも関わらず、1つの池沼で複数のクローナル個体群が競争排除されることなく存続しているのはなぜだろうか。本研究では、その理由を明らかにするために、山形県白鷹湖沼群・畑谷大沼に出現する2つの異なるD. pulexクローンを対象に野外で競争実験を行った。その結果、4週間の培養期間中に片方のクローンが競争的に排除されることはなかったが、クローンによって個体群の成長速度が違うことと、休眠卵の生産頻度が異なることが分かった。クローン間での生存戦略の違いが、2つのクローナル個体群の存続を可能にしていることが示唆された。


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