| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-084 (Poster presentation)

Hodotermopsis sjostedtiの野外巣におけるコロニー構造と繁殖様式

北出理,*角田滉平(茨城大・理)

Hodotermopsis sjoestedtiの野外巣におけるコロニー構造と繁殖様式

*角田滉平、北出理(茨城大・理)

オオシロアリはオオシロアリ科Termopsidaeに属する原始的な形態をもつシロアリで、科に共通した特徴として、一つの巣材でコロニーを営巣する単一材営巣者であるとされている。日本では南西諸島に生息するが、野外個体群の調査の結果、近傍に分布する巣では、カスト比や性比、共生原生生物組成が類似する傾向が見いだされた。このことから、本種はオオシロアリ科では特異的な多巣制の種である可能性が考えられる。さらに野外の成熟巣からは幼形生殖虫が多数みつかるため、近親交配が行われている可能性が高い。

これらの仮説を検証し、詳細な繁殖様式とコロニーの構造を明らかにするために、鹿児島県徳之島の個体群で3つのマイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型を調査し、繁殖様式、巣間の血縁関係に基づくコロニー範囲の推定を試みた。

3遺伝子座からはそれぞれ3-4の対立遺伝子が確認された。巣間の遺伝子型頻度の類似性の検定から、14の野外巣は9コロニーに由来することが確認され、本種が多巣制をとることが確認された。F統計量からは近親交配が一般的に起きていると考えられた。8コロニーでは3個体以上の生殖虫の繁殖あるいは他コロニーからの個体の移入があることが推定された。残る1コロニーでは、コロニー内の平均血縁度が0.916と高く、これは血縁関係にある一次生殖虫ペアが創設したコロニーと考えられる。このような営巣・繁殖状況は、オオシロアリ科と、系統的にオオシロアリ属に近い可能性があるシュウカクシロアリ科の中間的な形質と考えられる。


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