| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-110 (Poster presentation)

メスの鳴き声で繁殖干渉は回避できるか?~トノサマガエル属2種のもつ特殊な鳴き声~

伊藤 真(京大院・理・動物行動)

一般に、カエル類はオスが鳴き声を発して求愛を行っている。また、大きな鳴き声を出すための器官である鳴嚢もオスのみがもつため、繁殖の際にメスは鳴き声を発さないと考えられてきた。しかし近年、トノサマガエル属であるトノサマガエルPelophylax nigromaculatus(以下トノサマ)とナゴヤダルマガエルPelophylax porosus brevipodus(以下ダルマ)において繁殖期のメスが鳴いていることが演者によって発見された。これら2種は近縁種であり、実験下において不妊個体を形成してしまうことなどから、繁殖干渉の影響が強く、同所的に生息はできないと考えられてきた。しかしながら、実際には一部で同所的に生息しており、繁殖時期や繁殖場所も重なっている。さらに、同所的に生息している地域で行われた遺伝子を用いた解析によって、野外での雑種個体の割合が低いことが明らかとなっている。これらのことから、2種のカエルは特定の行動によって異種間交配を回避していると推察される。本研究ではこれら2種の雌雄での対面実験を種内と種間の合計4パターンで行い、行動解析によってメスの鳴き声に繁殖干渉回避の効果が存在するかを検証した。

その結果、トノサマメスは同種オスとのペア時に頻繁に鳴き声を発していた一方、ダルマメスはトノサマオスとのペア時に頻繁に鳴き声を発していた。両種ともにメスはトノサマオスが動いた直後に鳴いており、さらに両種メスの鳴き声にはトノサマオスの活動を抑制する効果があった。以上のことから、両種メスは鳴き声によってトノサマオスの繁殖行動を抑制していることが示唆された。また、ダルマメスが鳴き声によってトノサマオスの繁殖行動を抑制していることから、この2種間における繁殖干渉をメスの鳴き声によって回避していることが示唆された。


日本生態学会