| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-129 (Poster presentation)

奄美大島の亜熱帯照葉樹林の生物多様性指標候補としての大径木

*松本斉(東大・農), 大谷雅人(森林総研), 鷲谷いづみ(東大・農)

生物多様性保全のための保護区の設置や自然再生の適地選定のためには、森林に依存する生物相が比較的良好に保たれ種の供給源となりうる森林域を見出すことが必要である。大規模な人為的攪乱を免れ大径木が集中する森林域には樹洞などのマイクロハビタットや老齢林特有のフロラが存在するため、大径木は保全上重要な森林の指標となる可能性がある。本研究では、国立公園指定が検討されている奄美大島の亜熱帯照葉樹林を対象として、大径木が生物多様性保全上重要な森林の指標として有効である可能性を検討した。

奄美大島中部の金作原国有林で現地踏査を行った。1965年、1978年および1984年の空中写真で皆伐が認められる林域(「皆伐域」)および少なくとも1965年以降は皆伐が認められない林域(「非皆伐域」)を判別して40の100 m 2方形区を設けた。各方形区において林冠木胸高直径および樹洞数、枯死立木数、倒木数、着生植物種数を記録し、さらに林冠層、下層、着生のフロラを記録した。

GLMMによる解析の結果、林冠木の胸高直径は樹木あたりの樹洞数および着生植物種数に有意な正の効果を示した。非皆伐域では、100 m 2あたりの林冠層平均胸高直径および倒木数、着生植物種数がいずれも皆伐域に比べて有意に高かった。非皆伐域における100 m 2あたりの林冠層平均胸高直径は樹洞数、倒木数、および着生植物種数に対してGLMで有意な効果を示した。皆伐後の森林域で欠落する種や出現頻度に対して林冠層平均胸高直径が有意な負の効果を示した種は、分散能力の低い種や、耐陰性が高い種、湿潤環境を選好する種であった。本研究の結果により、大径木は長期間にわたり大規模な攪乱を免れマイクロハビタットに富む森林域や、自然性の高い森林フロラをもつ森林域を見いだす指標として有効なことが示唆された。


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