| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-132 (Poster presentation)

河川水辺の国勢調査のデータを用いた河川環境問題の検出:利根川下流域の植生を対象に

*望月通人(東邦大学・理),宮脇成生((株)建設環境研究所),萱場祐一((独)土木研究所),西廣淳(東邦大学・理)

日本の多くの河川において、外来植物群落の拡大の問題が生じている。本研究では、利根川下流域を対象に、河川水辺の国勢調査を活用し、外来植物群落の拡大が実際に生じているかを確認するとともに、変化のパターンを抽出し、河川における効果的な外来種管理につながる知見を得ることを目的とした。

4回分の調査(1995、2001、2006、2011)のデータを用いて、利根川の河口から-2.0 km~85.5 kmの陸域部分(約2,100 ha)について、植生群落の凡例を12個に統合した上で増減パターンを検討したところ、1995年から2011年までの間に外来草本群落が1.17倍に増加しており、区間の間に対応関係が認められた。1995年から2006年の間では、オギ・ヨシ群落面積が0.86倍減少、人工利用地面積が1.44倍増加していた。河川沿い1 kmごとに群落面積を集計したデータを解析した結果、人工利用地面積が減少した区間と外来草本群落面積が増加した区間に対応関係が認められた。2006年と2011年のGIS植生図を用いて、20 mグリッドのデータから土地被覆の遷移確率を求めたところ、2006年に人工利用地(主に農地)であった場所のうち、51%が他の土地被覆に変化しており、そのうち33%が外来草本群落に変化していた。人工利用地から外来植物群落に変化した場所で2014年に植生調査を行ったところ、全てのコドラートで、セイタカアワダチソウが優占していた。

以上のことから、人工利用地の一部では、在来湿性草本群落に戻らず、外来草本群落へと置き換わる場合があった。本研究の結果は、河川周辺での農地利用等の人工的な土地利用が、外来植物群落の拡大を引き起こす場合があることを示唆している。


日本生態学会