| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-139 (Poster presentation)

ヨタカは北海道に何羽いる?-夜行性鳥類の広域分布モデル-

*河村和洋(北大・農),山浦悠一(森林総研),先崎理之(北大院・農),藪原佑樹(北大院・農),赤坂卓美(帯広畜産大),中村太士(北大院・農)

土地利用変化と気候変動は生物多様性を保全する上で二大脅威であり、両者の相対的な重要度が注目されている。在・不在を扱う広域研究によって、土地利用が生物の分布に与える影響は気候・地形よりも小さいことが示されてきた。しかし、土地利用の変化で個体数が減少しても、不在にならない限り、在・不在では土地利用の影響が検出されない。よって、土地利用の影響は個体数を扱った方が顕著に表れる可能性がある。夜行性鳥類のヨタカは近年広域的に減少しており、土地利用や気候の変化が原因として指摘されている。本研究では、広域的にヨタカの個体数を調査し、土地利用と気候・地形が個体数に与える影響を調べた。

調査は北海道全域を対象とし、土地利用(周囲250 m・6 kmの森林率)、気候(繁殖期の平均気温・日照時間)、地形(標高)が異なる125地点で行った。各地点で繁殖期に2回ずつ、拡声器でヨタカの声を再生し、周囲250 mで鳴き返す個体数を記録した(プレイバック法)。ヨタカの個体数と環境要因の関係を調べるため、個体の不完全な発見率を考慮したN-mixtureモデルを用いた。得られたモデルを外挿し、北海道のヨタカの個体数を予測した。

ヨタカの個体数は、周囲6 kmの森林率が中程度(約60%)で、繁殖期の平均気温が高い場所で多く、土地利用と気候の相対的な重要度は同程度だった。耕作放棄地が森林へ遷移すると、森林率中程度の地域が減少するため、今後もヨタカの減少が懸念される。また、北海道で縄張りをつくる雄は約8万羽と予測された。プレイバック法とN-mixtureモデルの併用により、ヨタカの広域的な個体数を扱うことができ、生物多様性にとって土地利用が気候・地形と同等に重要であることが示された。


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