| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-142 (Poster presentation)

環境DNA手法の新たな展開〜沈水植物の検出法の開発〜

*藤原綾香(神戸大・発達),松橋彩衣子,土居秀幸(広島大・サステナ),源利文(神戸大院・人間発達環境)

世界には多種多様な生物種が生息しているが、近年その生物多様性の損失が問題となっている。その原因のひとつには自然に分布する地域以外に人間によって持ち込まれた外来種の存在が挙げられる。このような外来種問題に取り組むためには、まず原因となる外来種の分布を迅速に把握することが重要である。近年、従来より格段に簡単かつ迅速な手法として環境DNAを用いた水域の生物の検出方法が注目されており、動物環境DNAの検出が水槽実験および野外において報告されている。また、植物環境DNAも水槽実験レベルでの検出が報告されているが、まだまだ研究途上である。本研究ではオオカナダモ(Egeria densa)を対象として環境DNA検出手法を確立し、野外において応用可能であるかを検証した。オオカナダモは要注意外来生物に指定されており、在来植物への影響が懸念されている。まず、オオカナダモを特異的に検出できる系を開発し、水サンプルから植物環境DNAが検出されたことを確認した。次に水槽実験を行い、植物環境DNAの量の経時変化を観察した。最後に広島県内の野外のため池の水サンプルを用いて、本手法が野外に応用可能であることを検証した。水槽実験では水中のDNA量変化の増加が72時間後にピークを示し、その後減少して120時間後から240時間後に至るまで常に一定量以上のDNA量が検出された。野外調査では調査地すべてで目視での観察結果と環境DNAの検出結果が完全に一致した。以上の結果から、定常状態でも植物環境DNAが検出されることが示唆され、野外における環境DNA検出手法が植物にも応用可能であることが示された。環境DNA分野および外来種問題に取り組む上で大きな前進であると言える。


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