| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-150 (Poster presentation)

北海道北部の森林域における自動撮影カメラを用いた哺乳類・鳥類の空間利用の把握

*阿部葉月(北大・環境 科学), 吉田俊也(北大・研究林), 奥田篤志(北大・研究林)

近年、持続可能な森林管理が求められている中で、生物多様性保全への考慮が重要である。本研究では、その基礎情報を得るため、北海道北部の森林域における野生生物の出現傾向を解析した。北海道大学中川研究林内に設けた調査対象域(面積約20km2)には、天然生針広混交林を中心に、針葉樹人工林や広葉樹二次林、無立木地が点在しており、幅広い生息環境を含めた解析が可能である。2008-2014年の夏季、34箇所に設置された自動撮影カメラによって得られたデータを用いた。 期間内の各動物種の被撮影回数(以下、出現回数)を応答変数、周辺(カメラの中心から半径10m)内の毎木調査から得られた森林の状況をあらわすパラメータを説明変数として、一般化線形モデルによる分析を行った。鳥類および飛翔行動をする一部の哺乳類(コガタコウモリ類)については、精度の高いモデルは得られなかった。一方で、エゾリス、タカ科、エゾタヌキ、キタキツネの出現回数を予測するモデルの精度は、64%~78%と高かった。これらのモデルにおいて共通して影響していた環境変数として、出現樹種数、針葉樹の本数、ミズナラの本数、平均胸高断面積、平均樹高、樹高の変動係数、林道からの距離が挙げられた。このことは、餌資源が豊富で、複雑な森林構造をもつ森林が生息地として選択されることを示していた。講演では周囲の森林状況の空間スケールを変化させた際の結果についても、上記と合わせて、報告する。


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