| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-183 (Poster presentation)

農地景観における森林ネットワーク構造はエゾシカの分布に影響するか?

*矢部敦子(北大院・農),赤坂卓美 (帯広畜産大),藪原佑樹,中村太士 (北大院・農)

現在、世界各国で野生動物による農作物への深刻な被害が生じており、その対策が求められている。農業被害は主に中・大型哺乳類によって引き起こされており、北海道ではエゾシカによる農業被害が顕著である。

一般的に、農地景観では、面積や樹種構成が異なる森林がパッチ状に散在している。このため、エゾシカなどによる農業被害の対策を考える上では、森林パッチの面積や森林タイプを考慮する必要があると考えられている。また、特に分断化景観においては、多くの野生動物は複数の森林パッチを利用して分布している。このため、パッチの質(森林タイプや森林パッチ面積)のみでなく、森林パッチの連結性もまた考慮すべき課題であろう。しかしながら、農地景観において、中・大型哺乳類の分布について森林パッチの連結性を考慮して検討した研究は少ない。

以上を踏まえ、日本有数の農地景観が広がる北海道十勝地方を対象に、エゾシカの分布に影響を及ぼす要因を森林パッチ面積や森林タイプ(広葉樹林、針葉樹林、湿性林)に加え、森林パッチの連結性も考慮して明らかにする。本研究では、2013年および2014年の7~9月に対象地域内に計48台の自動撮影カメラ(広葉樹林16台、針葉樹林17台、湿性林15台)を設置しエゾシカの撮影を試みた。本発表では農地景観に散在する森林におけるエゾシカの分布とそれに関わる要因を把握した上で、農地景観におけるエゾシカの適切な管理方法について示唆を提供したい。


日本生態学会