| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-187 (Poster presentation)

ニホンジカの行動と列車衝突事故の関係

*曽我亮直(農工大),濱崎伸一郎(WMO),横山典子(WMO),酒井敏之(JR東海),梶光一(農工大)

有蹄類の交通事故が世界各地で多発しており、事故個体の負傷や死亡・人身被害など様々な問題を引き起こしていることから、事故の防止に向けた早急かつ効果的な対策が必要とされている。効果的な事故対策の実行のためには、動物が利用する資源の特定と横断移動との関連、およびそれらの衝突事故発生への影響に関する情報が必要であると考えられるが、これらを同時に調査した事例は少ない。そのため、三重県紀勢本線においてGPS首輪を装着したニホンジカの移動追跡データおよび列車衝突事故の位置情報を用いて、ニホンジカの資源選択性、線路横断地点の環境、事故発生地点の環境の関連性を明らかにした。

季節・昼夜別の資源選択性についてはManlyの選択性指数を、横断地点と周辺環境との関連および事故発生地点と周辺環境との関係についてはロジスティック回帰分析を用いてそれぞれ解析を行った。

シカは季節に関わらず日中に森林を利用し夜間に草地や水田を餌場として利用しており、草地や水田での探餌行動中に線路を横断するものの、横断先に餌がないために短時間で引き返すという行動がみられた。横断地点の選択には餌環境のほか視認性が影響を及ぼしており、横断しやすい場所ほど見通しが良く事故が発生しづらい結果となった。また、周辺の森林面積が大きいほどシカの密度が高く、事故が発生しやすくなる事が示唆された。

本研究から、事故の防止対策として捕獲による線路周辺に生息するシカの個体数の減少および線路周辺の視認性の確保が効果的であると考えられる。また、資源選択性、横断移動、事故発生地点の同時調査により事故発生の詳細な情報が得られたことから、シカの行動および事故地点の特徴を明らかにすることが事故対策の立案に有効であると考えられる。


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