| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-009 (Poster presentation)

ボルネオ熱帯雨林の群集系統:系統関係は群集動態に影響するか?

*伊東明,川本夏帆,名波哲,松山周平,山倉拓夫(大阪市大院・理), Stuart Davies, Sylvester Tan (CTFS), Lucy Chong (Sarawak Forestry Corporation), Mohizah B. Mohamad (Forest Department Sarawak)

ボルネオ島熱帯雨林の主要構成樹木643種の群集系統を解析した。Phylocomで推定した系統樹と大面積調査区(52 ha、15年間)の毎木データを使って、個体群特性値の系統保守性を解析した。その結果、最大サイズ、動態特性(死亡率、更新率、成長速度)は、系統的に近い種間ほど似る傾向(系統シグナル)があったが、ハビタット特性には「系統シグナル」は認められなかった。調査区を20 m四方、50 m 四方に分割して、局所群集の系統多様性をNet Relatedness Index(NRI)とNearest Taxon Index(NTI)で評価したところ、近縁種が離れて分布する傾向が見られた。以上の結果は、異なるハビタットに成立している群集のそれぞれに、近縁で更新特性の類似した別種がいること、局所群集が様々な更新特性を持つ多様な系統の種で構成されていることを示唆する。

フタバガキ科69種について葉緑体DNA(rbcL、matK、trnH~psbA)を使って分子系統樹を作成し、同様の解析を行った結果、フタバガキ科群集についても同じ傾向が認められた。

局所群集の系統多様性(NRI、NTI)と動態特性の関係を解析した結果、NR・NTIと動態特性に有意な相関が見られた。これは、局所群集の系統多様性が群集動態に影響している可能性を示唆するが、系統多様性と地形・土壌との間にも相関があったため、環境の影響による疑似相関の可能性もある。


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